「貴女はその身の裡に一匹の獣を飼っています」
神聖と傲慢が支配する多層都市
「汚らわしい魔性が! これまで生きて来れただけ有り難いと思うがいい!!」
舞い降りた殺戮者
「痛いか? 痛いよな? 当然だよな、痛くしてんだもん」
人ならざるチカラと、それを喰らうチカラ
「そんな薄っぺらい壁で、神の御光から逃れられると思ったのですか?」
血の海に沈んだ魔性達
「気に入らねぇんだよ。あの狂信者共も、シカトこく兵士も、いかれた天使共も!!」
差し伸べられた手
「一緒に来ないか? 殺すべき相手を、俺は知っている」
それは本当に救いの手?
「お前の中には獣が潜んでいる」
そのひとはわたしに笑いかけた
「そいつは常に自由になろうとして、鎖たるお前に牙を突き立てるだろう。お前は獣を打負かして自分の内に閉じ込めようとするだろう」
そのひとの手はとてもあたたかくて
「お前は主体のない戒めだ。内なる獣を縛る為だけに生まれたタダの鎖だ」
そのひとの背中はとても大きくて
「お前の中に獣が寄生してるんじゃない。獣の表面にお前がしがみついているだけだ」
でも――
「勝て。お前と言う戒めを引き千切り、外へ出ようとするそいつを相手に、何度でも勝つがいい。勝って、勝って、勝ち続けて、そしていつかは敗れ去るのだ」
でもね――
「お前が敗れた時こそが、世界の破滅の時なのだ」
それはほんとうに――
救い、なの……?
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