プロローグ
お母さんと一緒にいたのは、たぶん2年くらい前までだったかな。その頃からぼくは旅をしていて……と言うよりお母さんに連れられていただけなんだけどね……色々な場所で色々なものをみてきたよ。
うん、そう。お母さんも旅人だったんだ。行く先々の村や街で、鉱物を売ったりお店のお手伝いをしたりしてお金をもらってさ。でも一つの断片世界に一ヶ月以上いるようなことはなかったなぁ。
え? お父さん?
うーん。実はよくわからないんだ。お母さんに聞いてみたこともあったけど、誰だかよくわからないのって言われたんだ。……そういえばあのときお母さんはちょっと笑ってたけど、どうしてなんだろうなぁ。
ううん、ぼくは家はもってないんだ。お母さんは家をもってたらしいけど、ぼくが生まれてからは一度もかえってないみたい。きっとすごく散らかってるんじゃあないかな。
……ああ、そうか。この断片世界では家族はみんなおなじ家に住んでるんだよね?
ぼくらはちがうんだ。ぼくらの一族は一生をかけてじぶんだけの家をさがすよう、宿命づけられているんだ。
自分でたてちゃうのはダメさ。
ぼくらは、自然のあるがままのすがたで受け入れてくれる場所をさがすんだ。
それは街なかかもしれないし、ふかい森のおくにあるかもしれない。ひょっとしたら家のかたちをしていないかもしれない。それでもぼくらは家をさがすんだ。一生かけてね。
ぼくらは生まれながらに旅人なんだよ。
壁をこえる翼をもつ旅人なんだよ。
……ねぇ、聞きたい?
僕の家捜しの物語を。
ねぇ、見たい?
粉々に砕かれた世界の全容を。
ねぇ、知りたい?
僕達《真なる自由の民》の、真実の見聞を……
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